女猫

1983年に公開された、山城新伍監督、早乙女愛主演の映画『女猫（おんなねこ）』。この作品は、日活ロマンポルノの一作として制作され、当時の話題を呼びました。

作品概要

公開年: 1983年
監督: 山城新伍
脚本: 桂千穂、山城新伍
主演: 早乙女愛
主な出演者: 佐藤慶、内田裕也、高橋昌也、室田日出男、中島ゆたか など
ジャンル: ドラマ、官能、サスペンス

あらすじ

主人公は、愛欲と復讐の炎に身を焦がす女・藤原夏子（早乙女愛）。彼女は、かつて自分を辱めた男たちへの復讐を誓い、そのために身体を武器にして上流社会の男たちを次々と破滅に追い込んでいきます。

美しい容姿と知性、そして巧みな話術で男たちを翻弄する夏子の姿を通して、人間の欲望や背徳、そして愛憎が複雑に絡み合う世界が描かれています。

特徴と評価

『女猫』は、監督である山城新伍の独特の美学と、早乙女愛のミステリアスな魅力が融合した作品として知られています。

単なるポルノ映画という枠に収まらず、心理描写や映像美にも力を入れている点が特徴です。当時の日活ロマンポルノの中でも、異彩を放つ作品として評価され、早乙女愛の代表作の一つとしても挙げられます。

彼女の演技は、復讐に燃える女の内に秘めた感情を繊細かつ大胆に表現していると評されました。

『女猫』制作時のエピソードと当時の話題

『女猫』は、山城新伍監督の意欲作として、また日活ロマンポルノの新たな方向性を示す作品として、様々なエピソードと話題に満ちていました。

1. 山城新伍の監督デビュー作としての注目異色の監督起用

異色の監督起用

『女猫』は、俳優として絶大な人気を誇っていた山城新伍が、初めて商業映画のメガホンを取った作品として大きな注目を集めました。それまでの俳優としてのイメージとは異なる、官能的なテーマの作品を手掛けることに、多くの映画ファンや関係者が驚きと期待を抱きました。

「俳優が監督をすること」への関心

当時、俳優が監督業に進出するケースは今ほど多くなく、山城新伍という大物俳優がどのような映像世界を構築するのか、その手腕に注目が集まりました。彼自身も、脚本段階から深く関わり、独自の美学と世界観を作品に投影しようと尽力したと言われています。

2. 早乙女愛の起用と存在感ミステリアスな魅力

ミステリアスな魅力

主演に抜擢された早乙女愛は、当時すでにその神秘的な美貌と独特の雰囲気が評価されており、復讐に燃える主人公・藤原夏子という複雑な役柄にまさに適役とされました。彼女の持つ透明感と、内に秘めた情熱が、作品の官能的な世界観に深みを与えました。

大胆な演技への挑戦

ロマンポルノというジャンルゆえに、早乙女愛にはそれまでの清純派イメージを覆すような、大胆な演技が求められました。彼女はこれに果敢に挑戦し、女優としての新境地を開拓したと評価されました。当時のインタビューなどでは、役作りの苦労や、山城監督とのやり取りについても語られています。

3. 日活ロマンポルノの転換期における作品質の向上を目指す動き

質の向上を目指す動き

1980年代に入ると、日活ロマンポルノは「単なるポルノ」ではなく、「芸術性やドラマ性を重視した作品」への転換を図り始めていました。『女猫』は、まさにその流れを汲む作品の一つとして位置づけられ、美しい映像、練られた脚本、そして俳優たちの演技に重きが置かれました。

豪華キャストの起用

佐藤慶、内田裕也、高橋昌也、室田日出男など、当時の名優たちが脇を固めたことも大きな話題となりました。これにより、作品全体の格調が高まり、単なるポルノ作品とは一線を画す「本格的なドラマ」としての側面が強調されました。

4. 撮影エピソード監督とキャストの密な連携

監督とキャストの密な連携

山城監督は、俳優出身であることから、役者とのコミュニケーションを非常に重視したと言われています。特に主演の早乙女愛とは、役の解釈や感情表現について、時間をかけて話し合いながら撮影を進めたと伝えられています。

美意識の追求

山城監督は、映像の美しさ、特にライティングやセットの細部にまでこだわりを見せました。官能的なシーンであっても、単なる扇情主義に陥ることなく、耽美的な雰囲気を醸し出すことに腐心したと言われています。

5. 公開当時の話題賛否両論を呼んだ作品

賛否両論を呼んだ作品

そのテーマや内容から、公開当時は賛否両論を巻き起こしました。しかし、その話題性が逆に観客を呼び込み、興行的にも成功を収めました。

「ポルノを超えたポルノ」

一部の批評家からは、「もはやポルノの枠を超えた、人間の深層心理に迫るドラマである」といった評価も出ました。特に、早乙女愛の演技は高く評価され、彼女の女優としての地位を確固たるものにしました。

山城新伍の監督としての評価

『女猫』の成功により、山城新伍は俳優だけでなく、監督としてもその才能を発揮したと認識されるようになりました。彼の演出手腕や、作品全体をまとめるプロデュース能力も注目されました。

このように、『女猫』は、山城新伍という異色の監督、早乙女愛という個性的な女優、そして日活ロマンポルノというジャンルの転換期という複数の要素が絡み合い、当時の日本映画界に大きなインパクトを与えた作品と言えます。

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