痴漢白書 1

映画『痴漢白書』（1995年）
監督: 石岡正人
脚本: 橋本浩介

配役

良平: 吹越満

物語の主人公。ごく普通のサラリーマンで、電車内で偶然に憧れの女性の尻に触れてしまうことから、痴漢の世界に足を踏み入れることになります。彼の内面の葛藤や、痴漢行為への戸惑いが描かれます。吹越満は当時、個性派俳優として注目を集めており、本作では彼の繊細な演技が光ります。

葉子: 中原翔子

良平が密かに憧れる女性。彼女の存在が、良平が痴漢行為に及ぶきっかけとなります。中原翔子は当時のセクシー女優として人気を博していました。

羽生田: 十貫寺梅軒

ベテランの痴漢。良平の行為を目撃し、彼を「同業者」と見なし、痴漢の「ノウハウ」を伝授しようとします。独特の哲学を持ち、良平を導く狂言回しのような存在です。十貫寺梅軒の怪演が、作品に深みを与えています。

その他

有薗芳記
村松利史
葉月エリナ
佐和田恵

これらの俳優陣も、脇を固める個性的なキャラクターを演じています。特に有薗芳記や村松利史は、当時から現在に至るまで幅広いジャンルで活躍する個性派俳優として知られています。

あらすじの概要

主人公の良平は、ある日、電車内で偶然にも憧れの女性である葉子の尻に触れてしまいます。その行為を、痴漢のベテランである羽生田という男に目撃されます。

羽生田は良平を同業者だと勘違いし、彼に痴漢のテクニック向上のための「実践授業」を施す、というストーリーです。

この作品はR-18指定の作品であり、痴漢という題材からスリルと興奮を描いているとされています。

エピソード（主要な展開）

偶然の痴漢行為と目撃
主人公の良平は、満員電車の中で、偶然にも憧れの女性である葉子の尻に触れてしまいます。その瞬間を、ベテラン痴漢の羽生田に目撃され、彼に目をつけられます。

羽生田との出会いと「授業」

羽生田は、良平を痴漢仲間だと勘違いし、彼に痴漢行為の「実践授業」を施そうとします。最初は戸惑う良平ですが、羽生田の巧みな話術と独特の哲学に引き込まれていきます。

痴漢行為の描写と心理

羽生田は良平に、痴漢の「手口」や「快感」を伝授し、良平は少しずつその世界に足を踏み入れていきます。作品は、痴漢という行為が持つスリルや背徳感、そしてそれによって得られる（とされる）快感を、主人公の心理描写を交えながら描きます。

倫理的な葛藤

良平は痴漢行為に手を染めていく中で、倫理的な葛藤を抱えます。憧れの葉子への感情と、痴漢行為への嗜好の間で揺れ動く様子が描かれます。

終盤の展開

作品は、良平が痴漢行為によって何を得て、何を失うのか、という問いを投げかけます。単なるエロティック描写だけでなく、人間の欲望や背徳性といったテーマも含まれています。

時代背景

『痴漢白書』が制作された1995年は、バブル経済崩壊後の日本であり、社会全体が閉塞感に包まれていた時代でもあります。そうした中で、アダルトビデオ（AV）やエロティック映画は、大衆の欲望やストレスの捌け口として一定の需要がありました。

ビデオレンタル文化の隆盛

1990年代は、VHSなどのビデオレンタルが一般に普及し、様々なジャンルの映像作品が手軽に楽しめるようになった時代です。ピンクパイナップルのような独立系制作会社が、独自のテーマで作品を量産できる環境がありました。

男性のストレスと欲望

長引く不況や社会の閉塞感の中で、男性の抑圧された欲望や性的衝動が、作品の題材として注目されやすかったと言えます。特に「痴漢」というテーマは、社会的なタブーでありながらも、一部に根強く存在する性的な関心を刺激するものでした。

エロティック映画の多様化

この時期のエロティック映画は、単なるポルノグラフィに留まらず、心理描写や社会問題などを取り入れた、よりドラマ性の高い作品も制作されるようになりました。『痴漢白書』も、その系譜に連なる作品と言えるでしょう。

補足

この作品は、非常にデリケートな題材を扱っており、その内容については賛否両論があります。しかし、当時の社会状況や文化背景を理解する上では、一つの文化的表現として捉えることもできます。石岡正人監督は、この作品でタブーに触れつつも、人間の内面に潜む欲望や葛藤を描き出そうとした、と言えるかもしれません。

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